自分で作った甘酒、専門店の甘酒、市販の甘酒、お店によって味は全然違いますよね。その違いはどこからくるのでしょう?
過去の記事で美味しい甘酒の選び方を解説しました。今回はその中でもとても重要な「麹による違い」をより詳しく解説していきます。
麹にはどんな種類があるの?
麹の種類は大きく分けて3つ
まず日本で使われている麹には大きく分けて
- 黄麹 (日本酒、甘酒、味噌、醤油、その他色々)
- 白麹 (焼酎、一部日本酒)
- 黒麹 (泡盛、焼酎、一部日本酒)
と3種類あります。一般的なのは黄麹ですが、白麹や黒麹はクエン酸を多く出すことで温暖な地方での醪の発酵において雑菌に汚染されにくくなるという特徴があります。
この中でほとんどの甘酒には黄麹というタイプの麹菌が使われています。
黄麹の中でも種類は千差万別!
例えば、日本酒ファンのあいだでは、日本酒作りにおいて、どの種類の酵母を使うかが出来上がるお酒の味や香に大きな影響を与えることはよく知られています。
これと同じことが麹にも当てはまります。おそらく自分で味噌を作っている方は薄々感じている方も多いのではないでしょうか。麹って全然違う!と。
先日、京都で300年以上続く麹の種を販売するもやし屋の菱六さんに伺った際に、種麹のパンフレットを頂きました。
そこには淡色味噌に適した麹、赤味噌に適した麹、甘酒に適した麹など数十種類の麹の品種が載っていました!そして酒造り用はまた別のパンフレットに数十種類、、、パンフレットに記載しているのはごく一部のようで他にもたくさんの種類をお持ちだとのこと。
日本全国の種麹屋さんがそれぞれ別の麹の品種を販売されていること、またそれらは麹の世界に存在するごく一部だと考えると、宇宙のように無限の可能性を感じます。
注目すべきは酵素の力の違い
菱六さんのパンフレットにはそれぞれの麹菌の特徴が記載されていますが、その中でも注目すべきなのは酵素力の違いです。
酵素とは簡単に言うと、デンプンやタンパク質や脂質といった物質を分解するハサミのような役割をする物質です。
甘酒とは麹菌そのものがお米を分解するのではなく、麹菌が作る酵素がお米を分解することで作られます。日本酒も味噌も醤油も全てこの麹菌の酵素を利用して発酵させる食品です。
この酵素にもまたたくさんの種類が存在します。
- デンプンを分解するアミラーゼ
- タンパク質を分解するプロテアーゼ
- 脂質を分解するリパーゼ
などなど。
そしてアミラーゼの中にも、デンプンをオリゴ糖やデキストリンまで大雑把に分解するa-アミラーゼと、最小単位であるブドウ糖(グルコース)まで細かく分解するグルコアミラーゼなどがあります。
酵素力の違いを使い分けて様々な発酵食が作られる
これら酵素の働きの強さ、酵素力の違いによって、どの食品に適した麹かが違ってきます。
例えば、味噌はタンパク質が豊富に含まれる大豆を分解する必要があるので、タンパク質を分解するプロテーゼの強い麹が適していると言えます。
このプロテアーゼの力が弱い麹で作ればあっさりした味噌に、強い麹で作れば旨味の強い味噌が出来上がります。
逆に日本酒の大吟醸などはこのプロテーゼが強いと米のタンパク質が分解されて雑味として出てしまうため、プロテアーゼの弱い麹が好まれます。
また日本酒醸造ではアルコール発酵のためにデンプンを酵母が食べられる最小単位のブドウ糖まで分解する必要があるためグルコアミラーゼの強い麹が適しています。
どんな甘酒を作りたいかで適した麹は変わってくる
では甘酒にはどのような麹が適しているのでしょうか。これには一つの答えはなく、どのような甘酒を目指すかで変わってきます。
日本酒を製造している酒蔵さんの甘酒は、日本酒と同じ麹を使用していた場合、プロテアーゼが弱く、グルコアミラーゼが強い麹が使われている場合が多いでしょうから、出来上がってくる甘酒も必然的にクセの少ない、あっさりした風味の甘酒になるのではないでしょうか。
逆にお味噌屋さんの場合、味噌作りに使う麹はプロテアーゼが強いタイプのものが多いので、甘酒にしたときは米のタンパク質が分解されてアミノ酸となることで、旨味の強いしっかりした風味の濃厚な甘酒になることが多いように思います。
生甘酒専門店AMAZAKE HOUSEの麹は?
生甘酒専門店である私たちAMAZAKE HOUSEは麹室を持ちません。逆に言うと利点はそれぞれの麹屋さんの麹の特性を掴んだ上で、作りたい甘酒に最適な麹を選んだりブレンドすることが出来る点です。
私たちAMAZAKE HOUSEの目指す甘酒は
- クセの少ない、甘酒が苦手な人でも美味しく飲める甘酒であること
- お米の持つ栄養素を、麹の力で最大限に引き出した甘酒であること
- 腸活や内側から身体の調子を整えるのに有益な甘酒であること
この3つです。
酒蔵さんの甘酒と味噌屋さんの甘酒の良い部分を両方併せ持った甘酒とも言えます。この甘酒を実現するために、麹の酵素力や特徴を見極め、選び、ブレンドして作っています。
まとめ
今回は甘酒を選ぶ際のポイントとして「麹の違い」を解説しました。
麹には白・黒・黄の大きな属性があり、同じ黄麹の中でも種類によって酵素力に違いがあり、その違いを利用して様々な発酵食品が作られてきました。
酒造り用の麹で味噌を作ったらどうなるのだろう?味噌作り用の麹で酒を作ったらどうなるのだろう、甘酒を作ったら?などなど、興味は尽きません!
甘酒を選ぶ際に、この甘酒を作っているのは”何屋さん”なのか?どんな麹を使っているのか?などに注目して選んでみるのも面白いでしょう。
京都伏見のAMAZAKE HOUSEでお待ちしてます♪
私たちは京都伏見のAMAZAKE HOUSE (甘酒ハウス) という手作り生甘酒のお店です。京都産のお米と米麹を使用した、こだわりの甘酒を提供しています!
AMAZAKE HOUSEの店舗がある京都伏見は、日本酒の生産地として有名な発酵文化の根付く街です。
幕末の志士達も駆け抜けた風情ある酒蔵の並ぶ街並みや、桜や柳が綺麗で十石舟が行き交う濠川、京の都を遷都した桓武天皇陵や明治天皇陵のある桃山など魅力あふれる街です。
京都観光の際は是非伏見酒蔵地区へもお越しいただき、当店の生甘酒をお楽しみください。
お店の近くには月桂冠大倉記念館や、寺田屋、御香宮神社というスポットもあります。AMAZAKE HOUSEは竜馬通りという観光地内にありますので、観光の合間にぜひお立ち寄りください!
京都市出身 国際唎酒師・生甘酒専門店AMAZAKE HOUSE醸造責任者。
アメリカ、オーストラリア滞在を経て現在は京都伏見にて日本酒や甘酒、麹の文化を世界に発信している。ガイドを務めるKyoto Insider Sake Experienceはトリップアドバイザーで外国人に人気No.1の日本酒体験となっている。
京都市出身 国際唎酒師・生甘酒専門店AMAZAKE HOUSE醸造責任者。
アメリカ、オーストラリア滞在を経て現在は京都伏見にて日本酒や甘酒、麹の文化を世界に発信している。